フレイルとは(フレイルと漢方治療)【心療内科・精神科編】

漢方治療

フレイルとは?

フレイルとは、高齢者における健常な状態から要介護状態に陥るまでの中間的な段階と考えられています。

分かりやすくいうと、健康から死までを数直線で表した時に、

健康→フレイル(虚弱)→身体機能障害→死

という位置づけになります。

Fraility=フレイルを翻訳すると「虚弱」になりますが、虚弱という表現はより要介護状態に近く、不可逆的な印象を与えるという懸念から、2014年に日本老年医学界によりフレイルという表現が提唱されました。

フレイルの特徴

フレイルの特徴として、加齢による生理的予備能の低下によってストレスに対する脆弱性が亢進し、生活機能障害・要介護状態・死亡などの転帰に陥りやすい状態になります。

しかし、フレイルは可逆性であり、適切な介入により再び健康な状態に戻ることができるのです。

フレイルにおける身体的問題

筋力の低下、動作の俊敏性の低下、転倒リスクの増加などが見られます。

フレイルにおける精神・心理的問題

認知機能障害やうつ状態などが見られます。

フレイルにおける社会的問題

独居、経済的困窮などがみられます。

フレイルへの対策

フレイルへの対策については運動療法と栄養療法が大きな柱になります。

その為、フレイルに対しては医師だけでなく、薬剤師や看護師、管理栄養士、療法士、ソーシャルワーカーなど様々な職種の連携によるサポートが必要なのです。

フレイルの診断基準

フレイルの評価基準はさまざまなものが提唱されていますが、現在最も多く用いられているのはアメリカで提唱されている診断基準です。

身体機能・身体活動に関する3項目と自覚症状に関する2項目から診断します。

身体機能・身体活動の低下に関連する3項目

①力が弱くなった(握力の低下)

②活動量の低下(不活発)

③歩く速度が遅くなった。

自覚症状に関する2項目

④疲労感

⑤体重減少

フレイルの判定

健常高齢者

これら5項目いずれにも該当しないもの

プレフレイル

1または2項目に該当するもの

フレイル

3つ以上に該当するもの

フレイルへの漢方薬の活用

漢方医学には「未病」といわれる考え方があります。

「未病」とは「未だ病にならざる」、つまり病気と健康な人の中間の状態です。

未病の段階で、漢方薬と生活指導により介入することでフレイルを防いだり、可逆性であるフレイルから健康な状態に戻していくのです。

食欲不振、体力低下、疲労感への漢方

六君子湯:食思不振、元気のなさにおすすめです

補中益気湯:疲労感や倦怠感、食思不振におすすめです

十全大補湯:虚弱体質や食思不振におすすめです

人参栄養湯:体力低下や疲労感、倦怠感、咳嗽などにおすすめです

元気がない、気力低下、抑うつ気分、不安、不眠への漢方

帰脾湯:倦怠感や意欲低下、食思不振、くよくよ悩むような症状におすすめです

加味帰脾湯:倦怠感や、くよくよ悩むような方におすすめです

筋力低下、歩行困難、脱力感、腰痛といった身体症状への漢方

八味地黄丸:下半身中心の冷えが目立つ、腰痛、夜間頻尿がある方におすすめです

牛車腎気丸:冷え、むくみにおyる関節痛や腫れにおすすめです。

イライラ、喉のつまり、めまい、情緒不安定さへの漢方

抑肝散:イライラや不安感、不眠におすすめです

抑肝散加陳皮半夏:イライラ、不安感、不眠、食思不振などにおすすめです

半夏厚朴湯:喉のつまり、不安感などにおすすめです

半夏白朮天麻湯:めまいやふらつきが見られる方におすすめです

高齢者が漢方を内服する際の注意点

漢方によっては「甘草」という生薬を含むものがあり、甘草により偽アルドステロン症という状態がみられることがあります。

1日量の総力で2.5gを超えると、低カリウム血症が見られやすいといわれています。

漢方を長期的に内服する場合は定期的に採血を受ける用が望ましく、むくみに気を付けておきましょう。

十全大補湯などに含まれる生薬の「地黄」によって胃部不快感や食思不振が見られることがあるので注意しておくといいでしょう。

漢方はさまざまな生薬で構成されており、多く内服すればいいわけではありません。

漢方薬の内服に際しては、1剤ないしは2剤にしておくのがいいでしょう。

また、症状が続く場合は、早めに受診して相談されることをおすすめします。

タイトルとURLをコピーしました