SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)としては日本初のお薬であるルボックス、デプロメール(フルボキサミンマレイン酸)が1999年に承認され、それ以降、パキシル(パロキセチン)、ジェイゾロフト(セルトラリン)、レクサプロ(エスシタロプラム)と使用できるSSRIの選択肢が増えています。
現在SSRIはうつ病、パニック障害、社交不安障害、強迫性障害などの疾患に対して幅広く用いられています。
SSRIを他の薬に切り替える場合や、漸減中止をしようとした際に、睡眠障害やふらつきなどの離脱症状が出現することがあります。
抗うつ薬の離脱症状について
SSRIよりも以前から使用されていた三環系抗うつ薬においては離脱症状が出現することが知られており、問題とされてきましたが、SSRIの減量・中止の際にも離脱症状が出現することがあります。
離脱症状の主な症状
主な症状には、ふらふらする感じ、めまいや失神するような感じ、感覚異常、不安、下痢、倦怠感、運動失調、頭痛、不眠、イライラ、嘔気、振戦などがあります。
離脱症状はSSRIを1ヶ月またはそれ以上内服した方において、SSRIの中止あるいは減量後3日以内に出現することが多く、場合によっては数週間持続することがあります。
SSRIの中でも離脱の出やすさに差があり、パキシル(パロキセチン)は他のSSRIよりも離脱症状の頻度が多いという報告があります。
パキシル(パロキセチン)が離脱症状が出やすい理由
1)薬物動態的特徴によるもの
パキシルの薬物動態学的特徴が関係しています。
パキシルは他のSSRIと違い活性代謝物をもたず、また、血中濃度が内服用量増加に伴い非線形の上昇を示します。
そのため、中断や減量の際に、他のSSRIよりも血中濃度が急激に低下することが推測されます。
2)セロトニン選択制の高さによるもの
パキシルのセロトニン選択性の高さが関係しています。
長期間のSSRI内服により、後シナプスにおけるセロトニン受容体の脱感作が生じるため、SSRIの急激な中断や減量によりシナプス間隙でのセロトニン欠乏をきたした際に離脱症状が出現しやすいと推測されます。
また、前シナプスにおける自己受容体であるセロトニン1A受容体の脱感作が生じているために、セロトニン神経の活動亢進が起きにくいという報告もあります。
離脱症状の判断
実際の臨床では、離脱症状であることが正確に判断されることが重要です。
SSRIを中止した際に、抑うつ症状や不安症状の再燃なのか、薬剤切り替えを行った場合は新しい薬剤の副作用なのか、離脱症状なのかを判断する必要があります。
SSRI離脱症候群の診断基準
A)少なくとも1ヶ月間の使用期間後におけるSSRIの中断なるいは減量がなされている。
B)中断あるいは減量後の1~7日以内に出現する以下の症状が2つ以上
1)ふらつき、ふらふらする感じ、めまいまたは失神する感じ
2)嘔気、嘔吐
3)頭痛
4)振戦
5)倦怠感
6)不安
7)ショック様の感覚または感覚異常
8)不眠
9)焦燥感
10)下痢
11)不安定歩行
12)視覚障害
C)上記の症状が、臨床的に著しい苦痛、または社会的、職業的、または重要な領域における機能の障害を引き起こしている。
これらの症状が一般身体疾患によるものではなく、SSRIが処方された精神障害の再燃、もしくは同時に行った他の精神活性を持つ物質の中断あるいは減量ではうまく説明されない場合。
離脱症状への対処法
離脱症状が出現した場合、もっとも安易な対処法は中止・減量した薬剤を再開することです。
この場合速やかな症状改善がきたいできますが、再び減量を行った場合には、同様の症状が出現する可能性が高いので、減量中止の仕方に中止が必要です。
離脱症状への具体的な対策としては、減量する薬剤量と減量する間隔を長くするという方法があります。
特に少量になればなるほど離脱症状が出現しやすく、やめる時が最も出現しやすいと言われています。
そのため、パキシルを1日40㎎内服している場合は、2週間以上あけて5~10㎎/日づつ減量し、10~20㎎/日以下に減量する場合は、2.5㎎~5㎎/日で減量していくことで離脱症状を軽減できる可能性があります。
但し、それでもうまくいかない場合は離脱症状の出現しにくいレクサプロ(エスシタロプラム)に一旦置換してレクサプロで減量中止していくとうまくいくことがあります。