発達障害や精神疾患は遺伝するのか?

精神疾患の遺伝

統合失調症の疫学、遺伝要因

統合失調症の疫学

統合失調症の生涯有病率は約1%と言われています。これは一生のうちに約100人に1人が統合失調症に罹患するということです。

また、統合失調症の年間発生率は、人口1万人に対して0.5~5人と言われています。

工業国の都市地域に生まれた人に発症しやすいなどの報告はありますが、統合失調症はあらゆる社会と地域でみられ、発生率および有病率は、世界中でほぼ同様です。

また、統合失調症の半数の方は治療を受けていないという報告もあります。

統合失調症と遺伝要因

多くの遺伝研究によると、統合失調症の遺伝性の可能性はあると示唆しています。

染色体の部位では5・11・8番染色体の長腕、19番染色体の短腕、そしてX染色体の関係が指摘されています。

その他、6,8番染色体および22番染色体の遺伝子座の報告もあります。

但し、遺伝だけで発症するわけではなく、ストレス-素因モデルという考え方が一般的に広く受け入れられています。

つまり、遺伝素因に基づく発症しやすさに、ストレス負荷が加わると発症するという仮説モデルです。

このように、現時点では統合失調症はさまざまな遺伝素因に基づくというのが妥当な考え方といえます。

特定人口における統合失調症の有病率

一般人口 約1%

統合失調症患者の兄弟、姉妹(双子ではない) 約8%

両親のどちらかが統合失調症の子供  約12%

統合失調症患者の二卵性双生児 約12%

両親がどちらも統合失調症の子供 約40%

統合失調症患者の一卵性双生児 約47%

気分障害(うつ病、躁うつ病)の疫学、遺伝要因

気分障害(うつ病、躁うつ病)の疫学

うつ病はありふれた疾患であり、生涯有病率は約15%で、男性で約10%、女性では約25%にものぼるといわれています。

躁うつ病(双極I型障害)は、うつ病ほど多くなく、生涯有病率は約1%と言われています。

うつ病は心理社会的影響が大きく関わっており、遺伝以外の要因の影響が大きいと考えられています。

うつ病よりも躁うつ病の方が遺伝要因のが関与が大きいと考えられています。

躁うつ病と遺伝要因

双極I型障害の患者の第1度親族者が双極I型障害である割合は、対照群と比べて8~18

であり、うつ病である割合は、2~10倍になるとも言われています。

また、うつ病の患者の第1度親族者は、対照群と比べて、1.5~2.5倍双極I型障害に罹患しやすく、2~3倍うつ病に罹患しやすいとの報告があります。

一卵性双生児における双極I型障害の一致率は33~90%といわれています。

一卵性双生児におけるうつ病の一致率は約50%といわれています。

二卵性双生児における双極I型障害の一致率は約5~25%といわれています。

二卵性双生児におけるうつ病の一致率は約10~25%といわれています。

パニック障害の疫学、遺伝要因

パニック障害の疫学

パニック障害の生涯有病率は1.5~5%と言われています。

女性の方が男性より2~3倍パニック障害になりやすいと言われています。

パニック障害と遺伝要因

パニック障害と広場恐怖の遺伝的基盤についての対象研究の数は少ないですが、遺伝要素を有するという結論が支持されています。

パニック障害の患者の第1度親族ではパニック障害の発生率が4~8倍になるという報告があります。

また、一卵性双生児の方が二卵性双生児よりもパニック障害の一致率が高いと報告されていますが、現時点で特定の染色体の位置や遺伝様式との関連を示唆する情報は乏しいようです。

強迫性障害の疫学、遺伝要因

強迫性障害の疫学

強迫性障害の障害有病率は約2~3%と言われています。

青年期では男子は女子よりも強迫性障害になりやすいと言われていますが、成人では性差は認められないようです。

強迫性障害と遺伝要因

強迫性障害について、遺伝的要素を有するという結論が支持されています。

一卵性双生児の方が二卵性双生児よりも強迫性障害の一致率が高いと報告されており、強迫性障害の患者の第1度親族の約35%が強迫性障害との報告があります。

自閉症の疫学、遺伝要因

自閉症の疫学、遺伝要因

自閉症は約1万人に5人の頻度(0.05%)で発症するといわれています。

自閉症は女児よりも男児の方が4~5倍多いと言われています。

自閉症児の同胞の2~4%に自閉症がみられたとうい報告があり、これは一般人口の50倍の割合とされています。

注意欠陥/多動性障害(ADHD)の疫学、遺伝要因

注意欠陥/多動性障害(ADHD)の疫学、遺伝要因

米国の報告では、ADHDの発生率は2~20%とばらつきが大きく、控えめな報告では、前思春期の小学生の約3~7%であるといわれています。

男子の発生率は女子に比べて高く、2~9倍と報告されています。

ADHDに遺伝的な基盤があることは、二卵性双生児よりも一卵性双生児において障害の一致率が高いことによって支持されています。

ADHDに寄与する要因として、胎児期に中毒性薬物にさらされること、早産、胎児期における胎児の神経系の損傷などが示唆されています。

食品添加物や着色料、保存料、差等も多動の原因であるとの報告もあるが、科学的に証明されたものはないようです。

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