アナフラニール(クロミプラミン塩酸塩)を処方された方へ
一般名
クロミプラミン塩酸塩 clomipramine hydrochloride
製品名
アナフラニール
剤型
錠剤 10mg、25mg
注射 1アンプル(2ml)中25mg
適応
①うつ病・うつ状態
②遺尿症
③ナルコレプシーに伴う情動脱力発作
用法・用量
①うつ病・うつ状態:1日に50~100mgを初期用量として、2~3回に分けて内服し、1日最大225mgまで増量します。
②遺尿症:幼児は1日量10~25mgを、学童は1日量20~50mgを1~2回で内服します。
③1日10~7mgを1日1~3回に分けて内服します。
半減期
約21時間
アナフラニール(クロミプラミン塩酸塩)の特徴
アナフラニール(クロミプラミン)はスイスのガイギー社(ノバルティス・ファーマ社)により、イミプラミンをモデルとして、イミノベンジル系薬物として合成されたお薬です。
アナフラニール(クロミプラミン)は抗コリン作用の強い第一世代の抗うつ作用に属します。
日本では1973年より発売され、効果の高い抗うつ薬として臨床場面で現在でも処方されています。
ノルアドレナリン再取り込み阻害作用に比較して格段にセロトニン再取り込み阻害作用が強いお薬です。
その為、セロトニン神経系の機能異常の考えられている種々の病態において用いられる機会も多くみられます。
また、点滴静注が可能な製剤があることも大きな特徴です。
うつ状態で傾向摂取が困難になる重症な状態が出現することもあるため、点滴できるお薬が活躍する場面があります。
アナフラニール(クロミプラミン塩酸塩)の薬理作用、薬物動態
Tmax(最高血中濃度到達時間)は1.5~4時間で、半減期は21時間です。
アナフラニール(クロミプラミン)を含む三環系抗うつ薬はセロトニンおよびノルアドレナリン再取り込みを阻害することによりシナプス間隙におけるモノアミン濃度を増加させます。
三環系抗うつ薬の中でもアナフラニール(クロミプラミン)は、日本ではセロトニン再取り込み阻害作用がかなり強い方に位置する薬物です。
うつ病の方の中で脳脊髄液中のセロトニン代謝産物である5-HIAA濃度が低い人の方が、アナフラニール(クロミプラミン)を用いた治療に反応するという興味深い臨床報告があります。
アナフラニール(クロミプラミン)は経口投与の後に速やかに吸収されます。
排泄も速やかで、尿中に3分の2が、残りは便中に排泄されます。
アナフラニール(クロミプラミン塩酸塩)の適応症に対する効果
アナフラニール(クロミプラミン)のもつ抗うつ作用の特徴として、意欲や気分の高揚気分があります。
そのため、抑うつ気分、意欲低下に有効です。
点滴静注中に爽快感や開放感が出現することがあります。
遺尿症、夜尿症にも用いられますが、4歳以上の児童にみられる遺尿症で器質的病変によらない機能性の原因によるものが抗うつ薬による治療の対象になります。
遺尿症が就寝中に本人の自覚なしに起こるのが夜尿症です。
アナフラニール(クロミプラミン)は強力なセロトニン選択的再取り込み阻害作用により、セロトニン神経系機能の異常が考えられている他の病態にも使用されることがあります。
具体的には、パニック障害、強迫性障害、摂食障害、慢性疼痛症候群において用いられることがあります。
パニック発作の回数を減少させ、強迫性の症状の改善も報告されています。
小児の爪噛みに有効である報告もあります。
アナフラニール(クロミプラミン塩酸塩)の意点、副作用
アナフラニール(クロミプラミン)をはじめとする抗うつ薬において、服用開始後に抗うつ効果を発現する前に副作用が出現することもあります。
特に三環系抗うつ薬は抗うつ薬の中で、作用も強いのですが、副作用も出現しやすいお薬です。
用量依存的に出現しやすい中枢系の副作用としては、めまいを伴う低血圧(44%)、振戦(24%)、睡眠障害(10%)、知覚異常(7%)、めまい(6%)、脱力(5%)、性欲減退(3%)、易疲労感(2%)等の報告があります。
また、眠気や、注意力・集中力・反射運動能力の低下等がみられることもあります。
内服後、不安感や焦燥感、パニック、興奮、不眠、イライラ、攻撃性、衝動性、アカシジア等が見られる場合にはすぐに主治医に相談して下さい。
アナフラニール(クロミプラミン塩酸塩)の薬物相互作用
アナフラニール(クロミプラミン塩酸塩)はモノアミン酸化酵素阻害薬との併用は禁忌となっています。
抗コリン作用を有する薬剤と併用すると、それぞれの作用が増強されます。
アドレナリン作動薬、中枢神経抑制薬、全身麻酔薬、キニジン、メチルフェニデート、黄体・卵胞ホルモン製剤、シメチジン、フェノチアジン系薬剤、抗不安薬、飲酒の効果を増強させます。
降圧薬の効果を減弱します。
インスリン製剤、SU剤との併用では過度の低血糖を生じさせることがあり注意が必要です。
クマリン系抗凝血薬の血中半減期を延長させます。
バルビツール酸誘導体やフェニトインなどの肝薬物代謝酵素誘導作用を有する薬物はイミプラミンの作用を低下させます。
まとめ
アナフラニール(クロミプラミン)は効果の強いとされる三環系抗うつ薬に分類される抗うつ薬です。
特にセロトニン選択的再取り込み阻害作用を介した抗うつ作用は強いのですが、副作用も出現しやすく作用と副作用のバランスに注意が必要です。
臨床的には有用な場面もあり処方されることもありますので、主治医と相談しながら、効果と副作用のバランスのとれた服薬量を調整してもらうのがいいでしょう。