トフラニール(イミプラミン塩酸塩)を処方された方へ
一般名
イミプラミン塩酸塩 imipramine hydrochloride
製品名
トフラニール
剤型
錠剤 10mg、25mg
適応
①うつ病・うつ状態
②遺尿症
用法・用量
①うつ病・うつ状態:1日に25~75mgを初期用量として、1日200mgまで増量し、分割内服します。場合によっては300mgまで増量します。
②遺尿症:幼児は1日量25mgを1回、学童は1日量25~50mgを1~2回内服します。
半減期
約9~20時間
トフラニール(イミプラミン塩酸塩)の特徴
トフラニール(イミプラミン)はスイスのガイギー社(ノバルティス・ファーマ社)によりイミノベンジル系薬物として合成されたお薬です。
このお薬はクロルプロマジンという同じ側鎖をもつ化学構造をもっており、まず統合失調症の治療薬として試みられたが、クロルプロマジンほど明確な効果がなかったのです。
ところが、うつ病の方に対してのめざましい抗うつ効果が1957年に初めて報告され、抗うつ薬として開発が進められました。
日本では1959年より発売されて現在でも処方されています。
その後、イミプラミンをモデルとして多くの抗うつ薬の開発が進められました。
トフラニール(イミプラミン塩酸塩)の薬理作用、薬物動態
Tmax(最高血中濃度到達時間)は2~6時間で、半減期は9~20時間です。
トフラニール(イミプラミン)は、セロトニンおよびノルアドレナリン再取り込みを阻害することにより、シナプス間隙におけるモノアミン濃度を増加させます。
この薬理作用は投与後比較的速やかに引き起こされますが、実際の治療効果が出現するのは内服開始後より10日~2週間ほど必要です。
投与開始後1週間後に定常血中濃度に達します。
排泄も速やかで、経口投与後、尿中に24時間以内に約43%、72時間まで合計72%排泄され、残りは糞便中に排泄されます。
トフラニール(イミプラミン塩酸塩)の適応症に対する効果
トフラニール(イミプラミン)の適応症として厚生労働省が正式に認可しているのは、うつ病・うつ状態、遺尿症、夜尿症ですが、パニック障害や慢性疼痛症候群等の方の治療にも用いられることがあります。
トフラニール(イミプラミン)の抗うつ作用は特徴的で、意欲や気分の高揚作用が高いです。
鎮静作用や抗不安作用は弱く、かえって焦燥感や興奮、入眠困難等を惹起することがあるので注意が必要です。
4歳以上の児童にみられる遺尿症で器質的変化によらない機能性の原因によるものが抗うつ薬の治療治療対象になりえます。
その他、パニック発作を減らす効果、慢性疼痛症への鎮痛作用としての効果も報告されています。
慢性の頭痛、片頭痛、腰痛、関節痛、糖尿病性の神経痛、三叉神経痛などにも効果が報告されています。
トフラニール(イミプラミン塩酸塩)の意点、副作用
トフラニール(イミプラミン)をはじめとする抗うつ薬において、服用開始後に抗うつ効果を発現する前に副作用が出現することもあります。特に三環系抗うつ薬は抗うつ薬の中で、作用も強いのですが、副作用も出現しやすいお薬です。
低血圧、頻脈、口渇、便秘、排尿困難、めまい、倦怠感、眠気、振戦等が見られやすい副作用です。
また、内服後、不安感や焦燥感、パニック、興奮、不眠、イライラ、攻撃性、衝動性、アカシジア等が見られる場合にはすぐに主治医に相談して下さい。
トフラニール(イミプラミン塩酸塩)の薬物相互作用
トフラニール(イミプラミン塩酸塩)はモノアミン酸化酵素阻害薬との併用は禁忌となっています。
抗コリン作用を有する薬剤と併用すると、それぞれの作用が増強されます。
アドレナリン作動薬、中枢神経抑制薬、全身麻酔薬、キニジン、メチルフェニデート、黄体・卵胞ホルモン製剤、シメチジン、フェノチアジン系薬剤、抗不安薬、飲酒の効果を増強させます。
降圧薬の効果を減弱します。
インスリン製剤、SU剤との併用では過度の低血糖を生じさせることがあり注意が必要です。
クマリン系抗凝血薬の血中半減期を延長させます。
バルビツール酸誘導体やフェニトインなどの肝薬物代謝酵素誘導作用を有する薬物はイミプラミンの作用を低下させます。
まとめ
トフラニール(イミプラミン)は歴史の長い、三環系抗うつ薬に分類される抗うつ薬です。
抗うつ作用は強いのですが、副作用も出現しやすく、現在第一選択で使用されることは少なくなっているお薬です。
しかし、有用な場面もあり処方されることもありますので、内服し、副作用が気になるようならすぐに主治医に相談して、効果と副作用のバランスのとれた服薬量を調整してもらうのがいいでしょう。