【適応障害、うつ病、パニック障害】病気の経過と予後について

うつ病

精神科の病気の経過、治療期間と予後【適応障害、うつ病、パニック障害】

精神科、診療内科に受診をして診断がついた場合、その病気はどのくらいで治るのでしょうか。

インフルエンザや骨折などは個人差があっても数日から数週間の差で見通しがつくことが多いと思います。

しかし、高血圧症や糖尿病などの慢性疾患は、どれくらいで治るかというよりも、長期的に付き合ってコントロールしていくという治療になります。

精神科、心療内科の疾患は、風邪や骨折のように一過性の症状で、その後もとの機能に回復するような病気もありますが、多くは長期的にコントロールしていくような病気が多く、また、心理社会的要因、本人の特性、環境因子等の影響が大きいため、同じ病気でも治療期間や経過がそれぞれ個人により大きく異なります。

ただ、一般的な治療経過、予後が報告されている部分もあり、今回は一般的な予後についてまとめています。

適応障害の予後

適応障害の全体的な予後は、適切な治療が行われれば通常は良好です。

ほとんどの方は3か月以内に以前の機能水準にまで回復します。

適応障害の診断を受けた方(特に、若者)の中にはその後、気分障害もしくは物質関連障害に陥る人がいます。

青年期では通常、成人よりも回復に時間を要します。

青年期に適応障害となる方は、物質乱用とパーソナリティ障害の併存を注意深く評価する必要があります。

特にこれまで自殺企図をしたことがある方、身近な人の自殺を体験している方、不機嫌や不穏、興奮状態が出現しやすい方、精神科治療歴がある方は自殺行動の危険性がみられるという報告があります。

適応障害の予後のまとめ

適応障害は約3ヶ月以内で元の機能水準まで戻る一過性の病気です。

ただし、適応障害でも他の病気や薬物、アルコール乱用、パーソナリティ障害の合併などがあると、難治化してしまうため注意が必要です。

うつ病の予後

うつ病を初めて発症した場合、その約50%の方が発症以前に見過ごせない程度の落ち込みを経験しています。

このことから、早期発見と早期治療により、完全なうつ病の状態へ発展するのを予防できることが考えられます。

うつ病の方の約50%は、40歳以前に初回のうつ病がみられます。

発症が遅い場合は、気分障害(うつ病や躁うつ病など)の家族歴、反社会性パーソナリティ障害、アルコール乱用を伴わない場合が多いです。

うつ病の持続期間

うつ病のうつ状態は治療しないと6~13か月持続し、十分に治療されても約3か月は続くと言われています。

3か月以内に抗うつ薬を中止すると、多くの人で症状が再燃します。

症状が進行するに従い、より長時間のうつ状態が頻回に生じる傾向があります。

20年間における平均のうつ状態の出現の回数は5~6回と言われています。

うつ病の人が躁うつ病になる確率

最初の診断がうつ病であった方の約5~10%は、初めのうつ状態の6~10年後に躁状態の出現がみられます。

この転換期の平均年齢は32歳で、2~4回目のうつ病のうつ状態の後におきることが多いようです。

うつ病の予後

うつ病は慢性疾患であり、再発する傾向があります。

うつ病の初回のうつ状態で入院治療を行った場合、約50%は1年以内に回復します。

しかし、入院治療を繰り返すと、時間経過とともに回復する割合が減少します。

回復しない方の多くで気分変調症が残存します。

うつ病の方の約25%は退院後6か月以内に、約30~50%は2年以内に、約50~75%は5年以内に再発するという報告があります。

再発率は、予防的な薬物療法を受けている方や、これまでのうつ状態の出現が1、2回の方では低くなります。

うつ状態を多く経験するほど、うつ状態とうつ状態の間隔は短縮し、うつ状態の重症度が増えるといわれています。

気分変調症とは

気分変調症(dysthmia)とは、持続性抑うつ障害とも呼ばれます。

最も典型的な特徴は、ほぼ1日中持続する抑うつ気分が、長期間続くことにあります。

うまくやれていない、何もうまくいかないといった不適応感や、自分が悪いんだというような罪責感、過敏性、怒り、社会からの引きこもり、興味の喪失、活力減退、生産性の欠如などがみられる病態です。

薬物療法だけでなく、認知行動療法等の精神療法的アプローチの併用が有効でしょう。

うつ病の予後の指標

うつ病の予後良好となる目安としては、うつ状態の症状が軽いこと、幻覚や妄想といったような精神病症状がないこと、入院期間が短いことなどが挙げられます。

青年期の充実した友人関係、安定した家族、病気になる前5年間の社会機能の健全さも予後良好の目安になります。

他の精神疾患の合併がないこと、パーソナリティ障害がないこと、発症年齢が遅いことも予後良好の目安になります。

パニック障害の予後

パニック障害は通常、青年期後期から成人早期に発症しますが、小児期や青年期早期あるいは中年期に発症することもあります。

パニック障害の発症には明らかな心理社会的ストレス因子を特定することができないことが多いです。つまり、原因がはっきりせず、勝手に発症してしまうことが多いのです。

パニック障害は一般的には慢性的に経過する病気ですが、その経過はそれぞれの人により異なります。

長期経過においては約30~40%の方は長期間無症状であることが観察されています。

また、約50%の人は症状が軽度で生活がひどく妨げられることはありません。

約10~20の方で、著明な症状の持続が観察されています。

初回から2回目くらいまでは、パニック発作があってもその発作に比較的無関心でいる方もいます。

しかし、発作が繰り返されると、この症状が重大な懸念となり、また発作が起こることへの不安、恐怖感、いわゆる予期不安が持続するようになります。

自分の発作を秘密にしようとする方が多く、家族や友人がその行動の変化を心配するようになります。

パニック発作の頻度と重症度は変動し、パニック発作が1日に数回起こることもあれば、月に1度も起こらないこともあります。

カフェインやニコチンを摂取しすぎると症状は増悪します。

すべてのパニック障害の方の40~80%で、うつ状態が出現し、症状を複雑化させるという報告があります。

うつ状態が合併することにより希死念慮が増えます。アルコールやほかの物質依存が20~40%で生じ、強迫症状を呈することもあります。

家族との交流、学業成績や仕事の能率に支障をきたすことが多いです。

病気になる前の社会的生活の適応が良く、症状の期間が短い方は予後が良好な場合が多いです。

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